愛してたって、秘密はある。について少しだけ

このドラマはあんまり話を追わず 結構ぼやぼやみてたのですが、最終回をみて思うことがあったので少し話してみます。

主人公のことを彼と明示します。


《早速ネタバレがありますので、最終回まで見てなくてトリックを知りたくない人は読まないでください》













ここでは彼の「二重人格」にまつわる自分なりの解釈のようなものについて話してみます。
まずあらすじを少し。
彼は中学生の時、母に暴力を振るう父を目撃します。
母の命が危ないと感じた彼はとっさに父を殺害します。
父を殺害した彼は、自分のしたことが正しいことであると暗示することで罪の意識を和らげ、辛うじて生きていくことができていました。
そして母も息子を警察に連れていくことはしませんでした。

それから十分な時間が経過したある時、大学生の彼は父の精神の弱さや日々の苦悩が綴られた日記を見てしまいます。
その時彼が抱いていた「悪者」としての父の像が砕けると同時に、自らの犯した罪の重みを再認識することになります。
善行だと暗示してきた自らの行動が人殺し以外のなにものでも無かったことに気付くと、深く嘆き、絶望して、彼の心の拠り所はなくなります。

それとほぼ同時に彼のもう1つの人格があらわれることになります。

それではここでの彼のもう一つの人格とはどのようなものなのでしょう?

それは彼自身です。
とはいっても現実世界において理性的な行動をしている自分ではなく、彼の深層心理 無意識のようなものなのでしょう。
もっとわかりやすく言えば、彼の作り出した想像世界における「自分」と捉えることができるのではないでしょうか?

(ここで彼のもう一つの人格が、本質的に現実の彼と切り離された存在であるとする考えや、そういうものなのだと見出だす根拠などは一旦全て無視することにしています。)

それではなぜ別の人格を生んでしまったのでしょうか?
(それを考えることでもう1つの人格がどのようなものかの答えも明示します。)

それは彼が罪の重みに耐えることができなくなったということと、罪人として生きていくことへの恐怖から罪を自白することもできなかったからだといえます。
それらはいずれも「現実」で生きていく中での辛さであり恐怖です。
彼は現実社会で生きていく中での恐怖から逃れるために無意識にもう1つの人格を作り出したのです。
それは彼の「弱さ」ゆえの結果と言えることもできましょう。
よって彼の作り出した想像世界というのは現実世界で生きていく中での恐怖というものが一切ない世界です。
つまりそれは彼の罪を認めてくれるような想像世界です。
こう書くと人を殺しておいて、現実逃避する身勝手な人間に思えるかもしれませんが、彼が社会で生きていく上での僅かな救済の道であるとも言えるのではないでしょうか。

さて、彼が無意識に求めているのは彼の罪を認識した上で決して間違っていないと認めてくれる存在です。
それは彼の母親に他なりません。

彼の作り出した想像世界というのは、彼の罪を共有した上で彼を肯定し続ける母と彼の二人だけの世界なのです。

このドラマについては、これ以上あまりくどくど話す予定はないですが、気が向いたら母と彼の恋人などの彼の周辺について、少しだけ話せればと思います。